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料理人オーナーからの
熱いメッセージ
豚星
オーナー 佐藤 喜与佳さん

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厨房に立つ経営者

2017年7月掲載

小さい頃から集団や組織が苦手で 将来の夢は、お店を持つこと……

 再開発が進む武蔵小山の商店街に店を構える「豚星」は、昨年の2月に駅前から現在地に移転して再オープンした、焼きとんが人気の大衆酒場。にこやかな笑顔でフロアに立ちながら、経営者も務める佐藤氏は、その小さな体からは想像もつかないほどの大きなパワーの持ち主。「個人的に取材を受けるのははじめてなので、少し緊張しますね(笑)」と照れながら話す佐藤氏には、つい最近までひとつの秘密があった。それが、双極性障害(躁鬱病)である。
「小さいころは、まだ双極性障害とはっきり診断されていなかったので、なぜ他の子ができることができないんだろうってまわりと比べられて、親も私も大変でした。だから集団や組織も苦手。将来は自分のペースでできる仕事がいいんじゃないかと親にも言われていたので、夢は自分でお店を持つことでしたね。もちろん当時は飲食業を営むことになるとは思っていなかったけど、食べることはすごく好きで、食べ合わせのこだわりも人一倍強い感じでした」
 そんな佐藤氏は、洋服が好きだったため、中学、高校と進学するにつれて、飲食ではなくアパレルに強く興味を抱くようになる。
「洋服の買いつけや、古着が好きだったので、高校卒業後はファッションの専門学校に行こうと決めました。ただ、コンビニのアルバイトでホットスナックを1日100本以上売ったときに、もしかしたら私はコミュニケーション能力が高いのかも……と思い始めてもいました。自分の長所が分かれば、あとはそこを伸ばせばいいんだ!と漠然とではありますが、そう考えていたんです。その考えは、今も役立っていて、誰にでも向き不向きはあるのだから、うちのお店で働くスタッフには苦手なことをさせないようにしています」

アパレルの道に進むも、挫折 そして、出会ったのが大衆酒場

 文化服装学院を卒業した佐藤氏は、あこがれのアパレルの世界で働くことになる。しかし、買いつけを担当するバイヤーへの道のりは厳しく、早い段階で挫折したという。
「アパレルの会社で働いたからといって、みんながみんなバイヤーになれるわけではないことは、もちろん分かっていました。だから、それだけが挫折の理由ではないんです。長い時間働いて、がんばって洋服を買っても、食生活が乏しくなるのは自分らしくない、なんだか身の丈にあってないなと思えてきて……。だから、食べることを削ってまで洋服にお金を使うのはやめました。食生活はなるべく豊かにしたいという気持ちがあったし、洋服は毎日買わなくても生きていけるけど、食べ物は老若男女問わずに生きるために絶対に必要なものだから、仕事にできたら素敵だなと考えるようになりました」
 食べることだけでなく、飲むことも好きだった佐藤氏は、このときまで普通の居酒屋でしか飲んだことがなかったのだが、当時付き合っていた彼氏に大衆酒場に連れて行ってもらい、とても驚いたと話す。
「普通の居酒屋と同じ金額でこんな素敵な世界があるのかと、思わず感動しました。私自身、フランクな付き合いを好むので、大衆酒場の雰囲気はドンピシャだったし(笑)。料理もセントラルキッチンで大量につくっているものとは違って、つくっている人がひと目で分かる。大衆酒場の魅力をひとことで言うと“ライブ感”に尽きると思いますね」
 飲食の経験や料理の知識はほとんどないに等しい佐藤氏だったが、大衆酒場に出会ってからは、その魅力にどんどんと引きこまれ、自分がいつかお店を持つのなら大衆酒場なのではないかと心の中で強く感じていた。が、しかし、彼女はアパレル業のあと、いくつか職を転々とする。
「まずは、体のことも考えてありがちですけどヨガスタジオで働きました。それから、カナダのアスレチックウエアの会社に契約社員として入ったんですけど、いろいろと勉強になりました。何か問題があるとき、日本人はなかなか言わずに自分の中で消化してからマイルドに相手に伝えるけど、海外の人は、はっきりズバッと。なにかとクイックなんです(笑)。ここで問題を早めに共有する大切さを学びましたね。そのあとは、保険会社の派遣をやりました。いろいろな人と関わることが私にとって、お店を立ち上げる前のいい刺激になっていたと思います」
 そしてついに、2011年4月。佐藤氏は武蔵小山に大衆酒場「豚星」をオープンさせることとなる。

今後の夢は、いろいろとあるけど ネタばれになるので、秘密(笑)

佐藤 喜与佳

 小さい頃からの夢を29才で叶えた佐藤氏。彼女には、大事にしているモットーがいくつかある。
「つねに身の丈にあっていること。そして、適正であること。適正な価格、適正なサービス、適正な仕事を与える。あと、鮮度のいい食材。うちはお肉屋さんを通さずに市場で直接仕入れてきているので、鮮度には自信があります。それとやっぱり、私は右脳ベースな人間なので、インスピレーションは大事。感覚でやっている部分もあるので、おしかりを受けることもありますが、自分がワクワクしていないと意味がないと思うので……」
 双極性障害を抱えながら、数々の壁を乗り越えてきた佐藤氏。なぜ、飲食の経験も知識もない彼女がお店をここまで繁盛させることができたのか。そのことについて佐藤氏は「無知だったからこそ、感覚で進んでこれた」とサラリと答えた。そして、その病名をまわりの人たちにカミングアウトしたとき、ひとりのお客さんの言葉に彼女は救われたという。
「仲のいいお客さんが『私から見ればみんな、なにかしらの病に見える。たまたま病院に行ってないから病名を診断されていないだけ』と言ってくれたんです。なんだが気持ちが楽になって、ありがたかったです。いろいろと大変なこともあるけど7月には2号店となる“Pizza Q”もオープンするし、私の頭の中には夢がいっぱい。新しい業態なども考えているけど企業秘密で(笑)」
 佐藤氏のインスピレーションがつくりだす新しい飲食店とは一体どんなものか……。とても楽しみである。

厨房に立つ経営者
豚星
住所:東京都品川区小山4-3-6
電話:03-3787-1224
時間:17:00~23:30(L.O.23:00)
定休日:月曜日
交通:東急目黒線「武蔵小山駅」より徒歩3分
  • 文 安藤 陽子
  • 写真 yama

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