労働基準法20条において、「解雇をする場合、使用者は30日以上前に解雇予告をするか平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない」と定められています。この解雇予告手当の支払時期は、行政解釈によると「解雇の申渡しと同時に支払うべきである」とされています。それでは、解雇予告手当を支払わずに即時解雇した場合はどうなるでしょう。学説の中には、解雇そのものが無効になる説、労働者が解雇無効の主張と予告手当の請求との選択ができる説、などの見解があります。しかし、判例では「使用者が即時解雇に固執しない限り、解雇後30日が経過した時点または予告手当を支払った時点で解雇の効果が発生する」としています。したがって、5月25日に解雇予告手当が支払われれば、その時点で解雇が成立することになり、それまでは労働者としての地位が存在することになります(この場合、解雇予告手当の額は、5月16日から25日までの10日分減額できるので、平均賃金20日分となる)。
それでは、解雇成立まで就労しなかった10日間の賃金はどうなるでしょう。使用者の責に帰すべき事由による休業なので、労働基準法26条にもとづき、休業手当として平均賃金60%の支払いだけが必要との考え方もあります。しかし、これではまともに解雇予告手当を支払うよりも会社が得することになり、制度の無知を装って脱法的に行われる恐れがあります。ここは、民法536条2項にもとづき、全額の賃金を請求できると考えるべきでしょう。