第四十五回 レストラン セレニータ
2008.6.19

料理


味はハッキリ。でも、優しい――。それが平野シェフの料理スタイル。


有栖川記念公園を左に見ながらしばらく坂道を登ると、テニスコートが広がるスポーツ施設、その向かい側で日差しに包まれるように佇む赤いテントが「セレニータ」の目印です。前の道では、色とりどりの高級車が優雅に走り抜けていきます。絵に描いたような、セレブな街です。      

「セレニータ」には、独特のカジュアルな空気感が流れています。街のセレブリティたちも普段使いで訪れる、肩の凝らないレストランなのです。

オーナーシェフの平野貴之さんは、もともとフレンチの職人だったのですが、ある日パスタに興味を持つようになります。まだイタリアンがブームを迎える前の時代です。

「若い頃はパスタをバカにしていたけど、今振り返るとあの時代にパスタを勉強しておいてよかったです。<井の中の蛙>ではダメだってことですよね」

オープンキッチンには、大きいコンロが2台と小さいコンロが1台だけ。大きいコンロのひとつには常にパスタを茹でるための大鍋が乗っているので、コンロは事実上、大小一台ずつ。満席でオーダーが重なってくると、どうしても料理が遅れがちに。

「お客様を待たせしてしまうような時はとても心苦しいです。でも妥協だけはしません。お待たせしても、最高の出来を追求しています」

こうしたシェフの考え方が、日々料理を通してお客様にも伝わり、今ではエリアに愛される人気店に成長しているのです。


多くの人に支えられて店がある。だからすべての人をハッピーにしたい。


店内には著名人のサインをはじめ、様々な調度品が並んでいます。


「あの調度品は、常連のお客様からいただいた貴重な品です。エンブレム付きのジャケットもいただきました。それから、あの電動自転車は海外出張に行かれるお客様が<出張の間、使っていいよ>と貸していただいているもの。坂道が多いので重宝しております(笑)」

また、店名ロゴは、著名アーティストが気軽に描いてくれた手書き文字でもあります。

さらに、経理実務をお願いしているのは、妹さんの同級生だそうです。多くの人が、平野シェフを支えているのです。

「支えられ過ぎですね!」と、平野シェフ。

「父親がバッグや財布などの革製品を作る職人なんですね。で、私が料理の道へ進む時、こう言ったんです。<創る側は、たくさんの商品を売ろうとするが、お客様にしてみればその中のたったひとつを生涯所有することになる。この視点を忘れるな>」

「料理もそうですよね。その一皿がお客様の生涯の想い出になることもある。だから、塩加減ひとつミスしたとしても、その料理をお出しするわけにはいかないのです。ましてや、私は多くの人々に支えられて、こうして店を続けられている。どうして妥協などできるでしょうか」

南麻布という超セレブな街は、人が人を想う、とても人情味溢れる場所でもある――「セレニータ」に漂う空気感から、そんなことを感じることができました。

シェフの仕事

 

<MENU>

■ランチ  

本日のランチ

 
■ディナー

本日のコース

 

■アラカルト
田舎風黒豚のリエット     
牛挽肉と香草のスパゲティ  
北海道産エイヒレのムニエル 焦がしバターソース

 

1.500円

 

 

 

4,200円

 

 

600円

1,100円

1,900円

   

 

  内装   ジャケット   外観  
  調度品のほとんどはお客様からのプレゼント。エリアから愛されている証拠です。   ジャケットもお客様から。後ろに見える自転車もお客様からの貸し出しです。   閑静な住宅街の一角にあります。テラス席では愛犬とのランチも楽しめます。  

店舗情報

レストラン セレニータ
東京都港区南麻布3-1-23
tel.03-3444-1223
営:ランチ12:00〜14:30(L.O.)
   ディナー18:00〜22:00(L.O.)
休:月曜日(月曜日が祭日の場合は翌火曜日)
交:地下鉄日比谷線広尾駅徒歩8分

 

<予告>次回のリレーキーワードは?
 
「セレニータ」→ 仲間の独立オープン →「ストラン岩嵜」

次回のお店としてご紹介いただいた「レストラン岩嵜」の岩嵜シェフは、平野シェフの昔からの仲間です。「<ダ・ディーノ>の沼尻シェフもそうですが、岩嵜シェフは昔からの料理仲間です。私と同様、フレンチとイタリアン両方の経験をもち、お店のオープン時などにサポートに入ってくれたりもしました。今回、いい感じの店をオープンしたのでぜひご紹介したいです」。エリアはセレブな麻布から北上、川口市へと移動します。
文:高木 正人