第四十四回 ダ・ディーノ
2008.6.5

シェフの仕事


仕入れに行くと、コスト感覚より素材主義に走ってしまう職人気質。


テラスから差し込む光で、磨きあげられたフローリングが輝いています。額縁のボローニャ地方の地図、さりげなく置かれた洋書やボトルがリビングルームのような心地よさを演出してくれます。まるで沼尻芳彦シェフの自邸に招かれたような気分にさせてくれるインテリアです。      

あまりの床の美しさに、エントランスで靴を脱いでしまったほどです(汗)。

「すべて自分の目の届く範囲で仕事をしたいんですね。この坪数ならそれができる」

午前8時に築地で仕入れ。11時には店に入り、18時のオープンまでわずか30分ほどの休憩しか取らずに、黙々と仕事をします。

とても控え目なキャラでありながら、芯にはしっかりと職人魂が息づいているのを感じます。オーナーシェフというよりは、職人の中の職人といったタイプ。それが沼尻シェフです。

「本当は僕のような人間は、築地に行っちゃダメなんです。築地に行くと、ひとりで盛り上がってしまうんです。で、鮮度や品質の素晴らしい、コスト高の素材ばかりに目移りして、原価率なんかお構いなしになってしまう(笑)。だから、オーナーシェフ失格なんです」と、反省するように語る沼尻芳彦シェフ。

鮮度抜群の国産の鳩や牛肉、魚介を厳選。イタリア・ボローニャでの2年間で磨き上げた生パスタやボロネーゼ、クリームソースの技法。そして職人らしい頑固なまでの仕事を発揮して、独創的なコース料理を表現しています。


コースとしてのイタリアン。メインは、炭火焼きで素材を活かす。


常連客からも根強く支持されているのが炭火焼きによるメイン料理。例えば「埼玉県産鶉の蒸し焼き その内臓を使ったリゾを添えて」(右の写真)。


炭火焼きされた鶉を、リゾ(ごはん)と共にオーブンで仕上げる豪快な料理です。

まず、サービス担当の奥様がオーブン鍋ごとテーブルへ運んでくれます。蓋を開けるとふっくらと炊きあがったリゾの湯気に包まれて、備長炭で炙られた鶉が香り立ちます。香りだけでワイン一杯いけちゃうほどです♪

これをもう一度、キッチンに戻し、シェフ自ら皿に取り分けてくれるのです。五感を刺激する、とても楽しいプレゼンテーションですね。

骨までしゃぶりたくなる、しっかりとした肉質を味わった後、気になるリゾへ。鶉の旨味が凝縮したスープで、レバーやハツと一緒に炊き込まれた絶品です。リゾットとは違い、堅めの炊きあがり具合もちょうどよく、最後の一粒まで深い味わいが楽しめました。

「コースのみなので、気持ちよくメイン料理を迎えていただけるよう、流れのある展開を心がけています」

カメラを向けられるのが苦手。喋るのも得意な方ではありません。それでも一歩キッチンに入れば、ものすごい集中力で料理に向き合う。まさに魂を感じさせる職人です。

沼尻シェフの研ぎすまされた感性は、前回登場していただいた「アッカ」の林冬青シェフ同様、イタリアンの新しい波を感じさせてくれました。

料理

 

<MENU>

■シェフのおまかせコースのみ  

 

 ランチ

 ディナー

 

 

 

4,200円

8,400円

 

 

(土日)

 

<コース内容の一例>
■ガルガネッリのラグーボロネーゼ

 

■埼玉県産鶉の蒸し焼き その内臓を使ったリゾを添えて

 

■宮崎牛ランプのビステッカ(炭火焼きステーキ)

 

 

※電話予約をお願いします。

 

  処理した素材   蓋を開ける   店内  
  丁寧に仕事が施された鶉。ピンクに輝く肉質が新鮮な証。これを備長炭で焼き上げます。   蓋を開けるパフォーマンス。鶉の香りが立ち込めて…♪この後お皿に盛り付けされます。   リビングルームのような居心地の良さ。すべてシェフのセンスで演出されています。  

店舗情報

ダ・ディーノ
東京都渋谷区恵比寿南1-13-11 ヴェール2F
tel.03-3794-8585
営:平日18:00〜22:00(L.O.)
   土日ランチ12:00〜13:00(L.O.)
      ディナー18:00〜22:00(L.O.)
休:月曜日
交:各線恵比寿駅徒歩2分

 

<予告>次回のリレーキーワードは?
 
「ダ・ディーノ」→ 先輩シェフ →「セレニータ」

次回は、広尾の有栖川宮記念公園に近い閑静な住宅街にある「セレニータ」さんに伺います。「フレンチやイタリアンの技法を取り入れ、幅広く料理を追求されているお店です。しかも気さくに入れるカジュアルな雰囲気なのはシェフの人柄によるものでしょう。平野貴之シェフは私の先輩。いろいろと勉強させていただきました」 地元の人々に愛されている店づくりへの想いなどをレポートしたいと思います。
文:高木 正人