第四十三回 リストランテ ACCA(アッカ)
2008.5.22

シェフの仕事


イタリアンは技術的な料理ではない。ライブ感でつくるもの。


林冬青シェフは、1992年から5年間、イタリアに滞在。様々なレストランで仕事をしました。最後の3年間を過ごしたイタリア・ロンバルディアの「イル・ソーレ」(当時ミシュラン2つ星)では、シェフの側近としてメニュー開発チームの一員にまで登りつめたほどの実力者です。      

「イタリアンは、技術的な料理ではありません。ですから、技術を盗むとかじゃなく、シェフたちの考え方や料理への取り組み方を学びました。あと、野菜をまるごと囓った時の旨味とか、イタリアでは何気ない素材が信じられないくらい美味いんですね」と、当時を振り返る。

「でも楽しい想い出ばかりじゃないですよ。言葉が通じなかった最初の時期は、ノイローゼ気味になったほどですから」

シェフのコックコートは、襟付きの白いシャツ。自ら設計したアイランド型の機能的なキッチンでスピーディかつしなやかに仕事をします。

「あえて仕込みをしないんです。お客様がテーブルに着く直前まで魚介を活かしたり、野菜も切らないで、オーダーが通ってから一気に仕上げる。このスピード感、ダイレクト感こそがイタリアンだと思うから」

イタリア的であること――。林シェフは、イタリア的な店づくりを追求しています。ディナーの食事時間は3時間以上を想定、家族でお出迎えする店が多いイタリアに学び、お母さんが接客にあたります。イタリアの食文化そのものを、空間全体で表現しているのです。


シンプルさの中のモダンな感覚。それが現在の「アッカ」スタイル。


オープン当初(1997年)は、個人店でリストランテをやっている店は都内を探してもほとんどありませんでした。そんな先がけ的な魅力もあり、イタリアさながらのリストランテとして、モダンな料理を提供することをコンセプトに「アッカ」はオープンしました。


「でもリストランテというのは、観光客が訪れる店でもあるんですね。本当の地元の人たちが食べるものは、そこにはないんです。私自身、毎年イタリアへ出かけますが、<あぁ久しぶりに何を食べようか>と考えると、いつも思い浮かぶのは、リストランテの料理ではなく、伝統的な家庭料理だったりする。ニョッキとか、ポモドーロとかね」

自分が日本で提供している料理と、実際に自分が食べたい料理との間に、いつの間にか大きな開きが出来ていたのです。

「もっとシンプルに掘り下げようと思い始めたのです。研ぎすまされた伝統料理。家庭料理なんだけど、きちんとリストランテスタイルになっている料理。そんな方向性を探りはじめて10年を経て、現在のスタイルに変化してきたわけです。今は、本当に自分が食べたいものばかりつくっています」

例えば、こんな料理――。

そう言いながら林シェフがつくりだしたのは、誰もが知っている「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」。

大粒のイタリア産岩塩を投入したお湯で茹でた乾麺に、イタリア産にんにく、生唐辛子、パルミジャーノ、ヴァージンオイルを絡ませた一品。このシンプルさへの追求が、今の林シェフの考え方を象徴しているようでした。

ペペロンチーノ

 

<MENU>

■シェフのおまかせコースのみ  

 

 ランチ

 ディナー

 

※電話予約をお願いします。

 

 

4,500円

10,000円

 

 

 

 

 

  絵画   調度品   内装  
  知り合いの画家から贈られたブルーの絵画は、シェフの名「冬青」を表現したもの。   イタリアへ行く度、買い集めた民芸品がインテリアのアクセントになっていました   シンプルな内装。椅子は肘掛けがあり、ゆったりと食事ができるよう配慮されています。  

店舗情報

リストランテ ACCA(アッカ)
東京都渋谷区広尾5-19-7 協和ビル 1F
tel.03-5420-3891
営:ランチ12:00〜13:00((L.O.)
   ディナー18:00〜21:00(L.O.)
休:月曜日
交:地下鉄日比谷線広尾駅徒歩4分

 

<予告>次回のリレーキーワードは?
 
「ACCA(アッカ)」→ シンプル&モダン主義 →「ダ・ディーノ」

「研ぎすまされた伝統料理」と語る、林シェフの料理哲学、大変興味深いお話でしたね。さて、次にご紹介いただいたのは、恵比寿のリストランテ「ダ・ディーノ」さんです。「沼尻シェフは、職人の中の職人というタイプ。都内で修行していた時代の仲間でもあります。私以上に考え方がシンプル&モダンな人間だから、いろいろ面白い話が聞けると思いますよ」とのこと。楽しみです!
文:高木 正人