第三十五回 レストラン サカキ
2008.1.10

シェフの仕事


仕事の量と質が、料理に出る。
それを証明する、行列のできる人気店。

 

久々に美味しい野菜に出会いました。ランチのハンバーグをいただきましたが、つけ合わせの野菜を口に入れると、無農薬だからでしょうか、カラダの細胞が喜んでいるのが分かります。特にオーブンで軽く焼いたトマトのエレガントな甘さ♪

 

ジューシーなハンバーグと焦がしたキャラメルでコクを出したというデミグラスソースには、榊原大輔シェフのセンスの良さと繊細な仕事ぶりが伺えました。

 

ランチ営業の間、店内は満席。道路まで行列で溢れます。千円程度でこれだけの料理をいただけるのだから、行列も苦にならないのですね。ディナーも、ノートが真っ黒に見えるくらい、ぎっしりと予約情況が書き込まれています。

 

「それでもオープンして3ヶ月は予約ノートが真っ白だったんですよ。ほら、見てください、悲惨でしょ?(笑)」

 

確かに。真っ白なノート。そのページをめくると、3ヶ月、半年と、徐々に予約が増えているのが分かります。そして1年後、クリスマスの頃にはもう予約が取れないほどの人気店に。

 

「毎日、同じ精度で仕事したんです。そりゃ素材のロスも出ました。一度来店したお客様が再訪しないことに、落ち込んだこともありました。でも、毎日築地に通い、朝7時には仕込みを始め、ベストの料理を出し続けた。それが少しずつ認められたのかも知れません」

 

前回登場していただいた「てんぷら 深町」の深町シェフ曰く「榊原シェフは、人の何倍も仕事をする努力家」。常にベストを尽くす姿勢が、人気店「レストラン サカキ」の原動力となっているのです。



自分への投資も大事。店をもつことは、スタート地点にすぎないから。


榊原シェフは、様々なレストランで修業中の一部の若い料理人たちに、ある種の疑問と憤りを抱いています。

 

「面接でいきなり給料を聞いてくる。で、目標を聞くと<自分の店をもつことです>なんて言う。そして辞める時、理由を尋ねると<人と性格が合わないから>と言う。大いなる勘違いだと思いますよ」

 

予約が入らない時期を経験し、いまだに危機感をもって仕事をしているオーナーシェフらしい言葉が続きます。

 

「企業人でいるより、オーナーシェフの方がこれはもう明らかに大変なんです。オーナーシェフになったら、スタッフの給料が払えても自分の給料が出ない月だってあるんです。人と合わないという理由で自分の店を閉める訳にはいかないのです。オーナーシェフを目指すのなら、そうしたことを感じながら修業してほしいと思います」

 

榊原シェフの場合、修業時代から現在に至るまで、自分への投資を積極的に行っています。

 

料理に関する洋書や本に注ぎ込んだ資料代は数百万円に及び、必ず年に一度はフランスに食べ歩きの旅に出ます。フランスでのレストラン代にかけた資金は既に五百万円を越えています。趣味はただひとつ、自分の店をよくすること、なのです。

 

「私は幸いにして自分の店をオープンさせることができましたが、これからが勝負でもあるのです。オープンはゴールじゃない。末長く店を維持し、皆さんに愛されるためのスタート地点にすぎないのですから」

コンソメのジュレ


<MENU>

ランチ
■ハンバーグ(デミグラスソース)
■エビフライ

 

ディナー

前菜

■利尻産生ウニとコンソメのジュレ アボガドのムース添え

魚料理
■丹後産甘鯛のウロコ付け焼き 下仁田葱添え シェリービネガーソース  

 

肉料理
■スペイン産イベリコ豚(ベジョータ)のロースト 伊豆産のワサビ添え

 

■シェフおまかせコース



1,050円

1,100円

 

 


1,580円

 

2,480円

 

 

2,580円

 

7,350円


予約ノート一年後
ハンバーグ
  店内
店の歴史を物語る予約ノート。
空白のページが1年後には予約でぎっしり!
 
野菜の旨味が忘れられない一皿。
デミグラスソースは、ごはんにぴったりでした。
明るい店内。フレンドリーで落ち着いた
サービスが料理をさらに引き立てます。
店舗情報

レストラン サカキ
東京都中央区京橋2-12-12
tel.03-3561-9676
営:ランチ 11:30〜13:30(L.O.)

  ディナー 18:00〜20:30(L.O.)
休:日曜・祝日
交:都営浅草線宝町駅A5出口徒歩1分

  銀座線京橋駅4番出口徒歩2分

 

<予告>次回のリレーキーワードは?
 
「レストラン サカキ」→ 食べ歩き仲間 →「レストラン オマージュ」

勉強熱心な榊原大輔シェフでしたが、食べ歩きにも積極的です。次回、ご紹介いただく「レストラン オマージュ」の荒井昇シェフとは、食べ歩き仲間。「和食、中華、フレンチ、なんでも食べに行きます。そして荒井シェフの仕事ぶりには、いつも刺激を受けています」とのこと。下町・浅草で大人気のフレンチレストラン、その魅力をご紹介します。
文:高木 正人