「コーヒー&シガレッツ」

2003年 アメリカ  97分
■監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
■出演:ビル・マーレイ ロベルト・ベニーニ 
スティーヴン・ライト スティーヴ・ブシェミ 
イギー・ポップ トム・ウェイツ ケイト・ブランシェット 
テイラー・ミード ルネ・フレンチ
■DVD「コーヒー&シガレッツ」発売元:アスミック 
¥4,935(税込)※モノクロ
この情報は2006年11月時点のものです。

 

 

店内の「全面禁煙」にガンコ反対!
11組の登場人物が、コーヒーとタバコを片手に何気ない会話を交わす短編集。カフェで落ち合ったロベルト・ベニーニとスティーヴン・ライト。これから歯医者に行くというスティーヴンに、暇を持て余していたロベルトは驚くような提案を持ちかける(「変な出会い」)。アルフレッド・モリーナは、ロスに滞在中のスティーヴ・クーガンを呼びだす。初対面なのにやけに親密に振る舞うアルフレッドを、スティーヴは煙たく思い始めるが・・・(「いとこ同士?」)。
至福の時間度
料理の魅力度
総評
美女と何としても話したいウェイターのエピソード「ルネ」、ケイト・ブランシェットが素晴らしい2役を演じる「いとこ同士」が特にオススメ!

 

コーヒーを一杯、タバコを一服、会話を楽しむ
至福の瞬間が詰まったリラックス・ムービー


ジャームッシュのセンスに脱帽!

  インディペンデント映画界の雄、ジム・ジャームッシュ監督が送りだした本作は、意表をついた顔合わせの11組が交わす“茶飲み話”を積み重ねた異色作。その内容はショートムービーというより、スケッチと呼ぶにふさわしいほど何気ないものだが、オフビートなテンポの中にユーモアが溶け込んでいて、思わずニヤリとしてしまう。
  本プロジェクトは、86年に米の人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』向けに作られた、ロベルト・ベニーニとスティーヴン・ライトの「変な出会い」から始まった。そして89年、ジョイ・リー&サンキ・リー(スパイク・リー監督の兄弟!)、スティーヴ・ブシェミの2作目「双子」が作られる。カンヌ国際映画祭の短編部門で最高賞を獲得したイギー・ポップとトム・ウェイツの「カリフォルニアのどこかで」が製作されたのは、93年だ。つまり本作は、10年以上かけて撮りためられた作品集なのだ。
  出演者は、ジャームッシュ作品の常連や彼と親交の深いミュージシャンが中心だ。彼らが囲むのは、(いくつかの例外はあるものの)決まって白と黒のチェック柄テーブル。そこにコーヒーカップが置かれると、まるでゲーム盤に並んだコマのようだ。それを真上から撮ったショットの、なんとスタイリッシュなこと! 極めて日常的な風景を、どうしてこんなにカッコよく撮れるのか…。センスの良さにあらためて脱帽!

喫煙文化、バンザイ!

  イギー・ポップのセリフを借りれば「コーヒーとタバコは、最高のコンビネーション」だ。とはいえ本作に登場する11組は、それほど「相性バッチリ」でもないらしい。
  彼らの会話は微妙に噛みあわず、発言が真意でない方向に捉えられることもしばしば。しかし世の中、盛り上がる会話よりもそんな会話のほうが、多いんじゃなかろうか。そして気楽に盗み聞きしていてオモシロいのも、圧倒的に後者のケースだ。
  とはいえテーブルの当事者は、なんとか場をつなげようと必死になる。そんな時、喫煙者なら身に覚えがあるだろうが、何よりも強い味方となってくれるのがタバコだったりする。互いにぷかり、ぷかりと煙を吐き出してさえいれば、不思議と「沈黙の気まずさ」感は遠のいていき、やがて「至福の瞬間」がやってくるのだ。そんな“至福”が、本作にはギュッと詰まっている。
  ジャームッシュが本プロジェクトを手掛けている間に、世界規模の禁煙運動が猛スピードで推し進められてきた。しかしコーヒーとタバコのある、こんなゆったりとした時間を根こそぎ抹殺するなんて、もったいなさすぎる! と、私は思うのだが…。


文:谷藤さおり

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