新人パティシエと友人の乙女ゴコロを描いた 甘酸っぱくて繊細なスイーツ・ムービー! 画面から漂う甘い匂いにメロメロ! 高校を卒業後、その店のチェリーパイに惚れ込んでパイ専門店の門を叩いたキヨハラ。熱意は人一倍だけれど、お酒に弱い彼女はチェリーをキルシュ酒で煮詰める番をしているだけで、揮発したアルコールに酔ってしまう。不器用で手間のかかるキヨハラを、温かく見守りながら厳しく育て上げたのが、先輩パティシエの辻内だった。 しかし1年前、交通事故に巻き込まれた辻内はあっけなく他界。キヨハラは、一度はマスターしたはずのチェリーパイの味を再現できなくなってしまう。さらにサクランボを納入している農家の娘が、辻内と婚約していた事実が発覚! 密かに辻内に好意を寄せていたキヨハラは、いよいよ仕事が手に付かなくなってしまう…。 砂糖をまぶし火にかけたサクランボの甘い匂いが、全編に漂う。「海外には『チョコレート』や『ショコラ』などスイーツをテーマにした映画があるが、日本にはない。だから僕が作ろうと思った」と語る井上春生監督。その狙い通り「これはチェリーパイのプロモーション・ビデオ?」と見まがうばかりの、スイーツな映画が誕生した。 ちなみにチェリーパイは、自由が丘スイーツフォレストの全面協力によるもの。フチに特徴的なデコレーションが施され、つややかなチェリーがぎっしり詰まったパイは、何ともフォトジェニック。映画の主役にふさわしい、存在感にあふれている。 繊細でたくましい、女の子という存在 主人公と2人の親友、そして辻内の元婚約者。この悩める4人の女性たちとチェリーパイの関わりが、きっちり描かれていくところも心憎い。 キヨハラの友人で恋多き女・八千代と、キャリアウーマンでしっかり者の文は、しょっちゅう店にやってきてはチェリーパイを食べている。しかし彼女たちは、ただ甘いものが食べたくて店に来ているわけじゃない。大好きな友人が作るパイを食べることは、彼女たちにとって儀式にも似た特別なことなのだ。 お気に入りのスイーツで、癒される。男性は、そんな女性をゲンキンな生き物だと思うかもしれない。しかし女性は男性が思う以上に繊細で、恋愛が上手く行かなくなると途端に日常生活を送れなくなるほど、壊れやすい生き物だ。しかし同時に、その傷を自分で癒すことのできる、その方法をちゃんと心得た、たくましい存在でもある。男性監督が撮ったとは思えないほど、女性の感性が的確に、瑞々しく描かれていく。 陽光降りそそぐ日のアフタヌーン・ティーのように、リラックスして楽しめる、それでいてカタルシスにあふれた作品だ。
文:谷藤さおり
ごちそうエンタインデックスへ>>
グルメキャリー本誌は、毎月第1・3木曜日各コンビニエンスストア・書店にて好評発売中!次号は9月4日発売!
いつでもどこでも、グルメキャリーの新着情報をチェック!
http://gourmetcaree-tokyo.com/