末娘は結婚せずに、死ぬまで親の面倒を見なくてはならない―。そんな封建的なしきたりと支配的な母親に縛られた、非運の女性ティタ。台所で生まれた彼女は、冷たい実母よりも原住民の家政婦ナチャになつき、伝統的な料理の数々を習得する。
15歳になったティタは恋をするが、待っていたのは世にもおぞましい運命だった。ティタとの結婚を許されなかった恋人ペドロは、彼女と同じ家で暮らすため、なんと姉・ロサウラと結婚してしまうのだ。
そこから始まる一家の愛憎劇を20年にわたって描く本作だが、とうてい理屈では説明できない、幻想的でシュールな雰囲気がそこかしこに漂う。なかでも度々登場するのが、火の気のないところに突如、炎が立ち昇るシーン。怒り、嫉妬、欲望、情念…。彼らの激しすぎる感情が、実際に炎となって現れ、運命を動かしてしまう。
原題は「Como Aqua para Chocolate」、チョコラーテ(ホットチョコレート)のためのお湯のように。つまり、ぐつぐつと沸騰する熱湯を意味している。まさに煮えたぎるような人間の感情を生々しく描いた、壮大なメロドラマの本作に、いかにもふさわしいタイトルだ。