「カクテル」

 

1988年・アメリカ 103分
■監督:ロジャー・ドナルドソン 
■原作・脚本:ヘイウッド・グールド 
■出演:トム・クルーズ ブライアン・ブラウン エリザベス・
 シュー リサ・ベインズ ローレンス・ラッキンビル
■DVD「カクテル」 発売元:ウォルトディズニー スタジオ
 ホーム エンターテインメント  ¥1,500(税込)

この情報は2008年9月時点のものです。


男同士の約束は、決して忘れない!

除隊後、成功を夢見てNYにやって来た青年ブライアン・ブラナガン。しかし学歴から就職に失敗した彼は、街角のバーでアルバイトをしながら大学に通い始める。そこで腕利きのバーテンダー、ダグラス・コグランからシェイカーさばきを習ううち、腰掛けのつもりだったブライアンは、いつの間にか一人前のバーテンダーに急成長。師弟であり親友となった2人は、いつか自分たちの店を持とうと誓うが、女性関係のトラブルから仲違いしてしまい…。

技の華麗度
酒の魅力度
総評

フレアバーテンダーの世界大会で名を馳せる前田兄弟も、本作でフレアに出会ったとか。ブームの兆しを見せるフレアの原点を、再確認してみては?

 

フレアバーテンダーを世界中に紹介した
トム・クルーズ主演の大ヒット作!

当時の日本を驚愕させたT・クルーズ

 すっかり日本が欧米化した今では、どんな洋画を見ても、驚くほど目新しいモノに出くわすことはそうないはずだ。しかし、ほんのひと昔前。洋画は、今よりずっとエキサイティングでホットな存在だった。
 たとえば83年の「フラッシュダンス」。初めて見るブレイク・ダンスに、流行に敏感な若者は熱狂した。そして89年に上陸した本作「カクテル」。“セックス・オン・ザ・ビーチ”“ジュ・ダムール(愛のジュース)”なんてシゲキ的で洒落た名前のお酒があることを、日本人は初めて知った。
 当時から徹底した役作りで知られた、トム・クルーズの見事なカクテル作りのパフォーマンス、フレアバーテンダーのインパクトは何より強烈だった。ボトルや氷が宙を飛び、グラスはあっという間に美しい色で満たされる。本来、一杯のカクテルを作るのに、いろんなものをぶん投げたり振り回す必要はまったくない(劇中には「客の目をごまかして、酒の量を減らすために派手にやれ」というセリフがあるが…)。しかしアクロバティックにカクテルを作るイケメン・バーテンダーに熱狂する酔客を見て、日本人は夜をもっと自由に、気楽に楽しんでいいことを教わったはずだ。
 アメリカではアイドル青春映画の烙印を押され、「その年のもっともヒドイ映画」に贈られるラジー賞を受賞してしまった本作だが、世界中にカクテル文化を知らしめた功績は非常に大きいはずだ。


鑑賞するなら“男くささ”に注目を!

 一般的に、青春ラブストーリーと紹介されている本作。しかし十数年ぶりに改めて見ると、そのアプローチでは作品の本質には触れられないのでは、と疑問を抱いた。
 主人公ブライアンは、何も持っていない若者だ。だからこそ偶然の出会いやハプニングに従順に身を任すことができ、ジェットコースターのような人生を走り抜ける。
 しかし彼は、NYに出て来てすぐに出会った年上のダグラスに、深層心理で影響され続けている。時に行き当たりばったりに見える行動の裏には、いつもダグラスへの憧れと対抗心が隠れているのだ。そしてダグラスにとっても、この自分を見つめる若い友人が小さからぬ存在だったことが、映画の後半で明らかになる。
 これは世間知らずな青年の成長物語でも、純愛ラブストーリーでもない。男同士の友情を描いた、いわゆる“バディもの”なのだ。本作を見る時には、時に歪んだ行動になって現われる男二人の“絆”を意識して見てほしい。本作を時代遅れの色あせたトレンディ・ドラマだと感じていた人も、骨太の力強い魅力を再発見できるはずだ。

文:谷藤さおり


応募者プレゼント