「プロフェッショナル 仕事の流儀
 ウイスキーブレンダー
 輿水精一の仕事」

 

TV放送:2006年・日本 本編43分+特典37分

■出演者:ウイスキーブレンダー 輿水精一
■キャスター:脳科学者・茂木健一郎 住吉美紀アナウンサー ■DVD「プロフェッショナル 仕事の流儀 第3期/
 ウイスキーブレンダー 輿水精一の仕事
 優等生では面白くない」
 発行・発売:NHKエンタープライズ¥3,675(税込)

この情報は2008年7月時点のものです。


旨いウイスキーに芸術性すら感じる!

誰もが認める「その道のプロ」の仕事を、徹底的に掘り下げるTVドキュメンタリーシリーズ「プロフェッショナル 仕事の流儀」。時代の最前線にいる彼らは、どのように発想し、斬新な世界を切り開いているのか。これまでどんな試行錯誤を経て、成功を掴んだのか。そして混沌とした今の時代とその先を、どのように見つめているのか…。仕事の現場に密着した取材ドキュメントVTRと、スタジオに本人を招いてのインタビューで、“超一流”の仕事ぶりに迫る。

一流のシビア度
酒の魅力度
総評

DVDでは、未放送のインタビューも収録。TV放送を見た記憶のある方も、より深くウイスキーブレンダーの世界が語られる特典映像は一見の価値アリ。

 

ストイックな世界的ウイスキーブレンダーから
“超一流の仕事ぶり”を学ぶドキュメンタリー

ウイスキーブレンダーの仕事とは?

 世界的なコンクールで、何度も最高賞を受賞してきたウイスキーブレンダー・輿水精一(こしみずせいいち・57才)。彼のブレンドしたウイスキーは、「欧米にはない繊細でしなやかな香りがある」と絶賛されてきた。サントリーでたった一人のチーフ・ブレンダーとして、同社の全ウイスキーの味と香りに責任を持つ男の、知られざる“仕事ぶり”に迫る。
  樽材、気温などで味と香りが大きく左右されるウイスキー。樽に仕込む時には、職人でも30年、40年後にどんな酒に仕上がるのか、予想もつかないのだという。ただ、今の自分ができる最善を尽くすしかない。
  やがて長い月日を経て、樽ごとに味も香りも違う「原酒」が出来上がる。しかしこの原酒、単独で味わうとクセが強すぎ、味も単調で旨いものではないらしい。そんな原酒の長所を伸ばし、短所はカバーして奥深い味わいを醸すよう、時には40種類以上の原酒をブレンドし、個性を響き合わせていくのが、ウイスキーブレンダーの仕事だ。
 まずはどんな顧客層に、どのくらいの価格帯で提供するのかを考えながら、味や香りのバランスの完成予想図をイメージする。それから貯蔵庫に眠る膨大な原酒から、最適なものを探し出し、完成イメージを実現させるべく、無限の組み合わせを根気強く試していく。とはいえ予想図にぴったりの個性を持つ原酒が、蔵にあるとは限らない。いわば限られた色数しかないパレットを見つめ、その中から理想の色を作り出す方法を考えるのだ。最終的にその調整は、一滴単位で行われていく。まるで調香士のそれを思わせる、繊細な仕事だ。


第一人者が見せる悔恨の表情

 ウイスキーブレンダーという特殊な仕事も興味深いが、輿水精一という人物も魅力的だ。スタジオでインタビューに答える彼は、常に伏し目がちで、指先は緊張で震えている。控えめで素朴な人柄が窺える。
 毎日、誰よりも早く出社し、仕事を始める輿水氏。昼食は、社食で毎日同じものを取るという。その日のメニューによって、午後の味覚に影響が出ることを防いでいるのだ。うがいは1日3回。徹底した自己管理に、厳しいプロ意識が見て取れる。
 そんな彼が、過去の自分の失敗を語る表情は、特に強い印象を残す。その後、世界的に高い評価を受けて成功体験も積んできた彼だが、その失敗の痛みは今も薄れることなく、深く心に残っているようだ。彼がこんなにも悔しがるのは、己の仕事に真摯に向き合っている何よりの証拠。世界の第一人者が見せる後悔と苦悩の表情は、どんな金言よりも、深い教訓を与えてくれる。

文:谷藤さおり


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