「ファストフード・ファストウーマン」

 

2000年 米・仏・伊・独 98分
■監督・脚本: アモス・コレック  
■出演:アンナ・トムソン ジェイミー・ハリス

ルイーズ・ラサー オースティン・ペンドルトン
■DVD「ファストフード・ファストウーマン」
発売・販売:タキ・コーポレーション
¥4,935円(税込)

この情報は2007年9月時点のものです。

 

 

文句は言うが店を辞める気はない!
NYのダイナーで働くウェイトレス・ベラは、間もなく35才。 もう若くないトシなのに、舞台演出家と10年以上も不倫を続けている。 そんな時、母親の紹介で作家志望のタクシードライバー、ブルノと出会う。 2人の仲は急接近するものの、ささいな行き違いが重なって、なかなか相手の気持ちをつかめない。 結局ベラは、たった1人で寂しく誕生日を過ごすことに。 その夜、老女が暴漢に襲われている現場に出くわしたベラは、果敢にも彼女を助けるが・・・!? 。
人生まだまだ度
料理の魅力度
総評
都会生活者の孤独をにじませながらも、重くなりすぎないドラマは就寝前にもピッタリ。 楽天的だけど浮ついてはいない、良質な大人の群像劇!

 

ダイナーのそう若くないウェイトレスと
元気な老人たちの軽妙ヒューマン・ドラマ


ダイナーの“看板娘”は35才

 「もう、こんな店辞めてやる!」が口グセのウェイトレス、ベラ。そのくせ仕事はテキパキしていてソツがない。店と一緒に歳を重ねてきたオーバー60な常連客の健康にまで気を遣い、「塩は少なめにして、糖尿病よ」と料理人に指示を出す。35才になるとはいえ、常連の老人客からすれば若くて美しい彼女は人気者だ。たった一日で68ドルのチップを稼ぐヤリ手でもある。当然店は、彼女を毎回必死で引き止める。
 だが1人でいる時の彼女は、突然真昼の車道に寝ころびだす。素っ裸でアパートのベランダに出ては、深夜のNYに向かって大声で呼びかける。神経衰弱じゃなかろうか、と心配になるような奇行に走るのだ。
 単なる“不思議ちゃん”なのか、それとも実はなかなかデキる人物なのか…と彼女のキャラを観察しているうちに、いつのまにかベラから目が離せなくなる。ものすごい美人ではないけれど、必ずつまずくのがわかっているのにハイヒールに挑戦し続ける彼女は、思わず応援したくなるキュートな魅力の持ち主なのだ。

結末がまったく見えなくなる群像劇

 そんなある日、ベラは母親の紹介で知りあったブルノとデートすることに。 親友の助言に従い、「子供は大嫌い」と告げるベラ。本当は部屋に迷いこんだネズミをいたわるほど心優しく、子供も大好きなのに。 これはもちろん結婚のプレッシャーを相手に与えないための作戦だが、実はバツイチ子持ちのブルノには逆効果に働いてしまう。
 一方、店の老常連客ポールも、新聞の個人広告で見つけたエミリーとデートに漕ぎ着ける。 ポールを気に入ったエミリーはモーションをかけるが、一向に深い関係に踏み込もうとしない彼に不安を募らせる。
 なぜかベラの周辺には老人が多いのだが、終盤になるとそんな人々が意外な組みあわせで関係を深め始める。 すると化学反応を起こしたように、人物相関図が劇的に変化する。そしてベラも、運命的な“偶然”と巡りあうことに…!  それまでソファに身を沈めて見ていた人も、思わず前のめりになってしまう怒濤の展開が待ち受けている。
 それにしても、題名の「ファストウーマン」は意味深な言葉だ。 ベラの働きぶりを意味するのか、はたまた女たちのベッドインまでの時間、つまり決断の速さを意味するのか。 私は「男より速く歳をとる女たち」が正解じゃないか、と思う。あまりの速さに、女たちは自分が歳をとった実感がない。 だからこそベラは少女の純真さを、老女たちはセクシーな物腰を失わずにいられる。 当然男たちは振り回されるが、それが女なのだから仕方ないのだ。

文:谷藤さおり

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