ネズミのレミーの夢は、一流シェフ!? パリの厨房が舞台のファンタジック・アニメ 厨房の喧騒がそのままアニメに! 一つひとつでも、おいしい食材。でもそれを同時にほおばると…元の味からは予想もつかない、味覚のシンフォニーが生まれる。そんな“味の無限の組み合わせ ”研究に余念がないレミーの夢は、フランスで一番の料理人になること。だがレミーは所詮 “キッチンの嫌われ者”、ネズミだ。 そんな夢は見るだけムダとあきらめていたが、ひょんなことから人間の協力者(というよりあやつり人形?)を得たレミーは、一気に夢に近付くが…!? 史上初の長編フル3DCGアニメ『トイ・ストーリー』をはじめ、『ファインディング・ニモ』『カーズ』などの作品を世に送り出してきたディズニー /ピクサーの最新作は、なんとレストランが舞台だ。 本物以上においしそうな料理は、料理写真の光や色を徹底的に研究し描かれた。またシェフたちのこなれた動きを描くために、 01年タイムマガジン誌でアメリカズ・ベスト・シェフに選ばれたカリスマシェフ、トーマス・ケラーを招き、調理風景を撮影したという。 さらにスタッフ向けに料理教室を行い、調理道具の使い方、料理の盛り付け方などを学んだという徹底ぶり。 とことんディテールにこだわる本物嗜好のピクサーならではの、魅力あふれる映像に思わずワクワクさせられる。 特に逃げ回るレミー、つまりネズミ目線で描かれるディナー・ラッシュの厨房シーンは、スリリングで活気にあふれていて素晴らしい。 隠し味は大人の観客へのメッセージ ピクサーの魅力は、職人芸的な映像の美しさだけではない。子供よりむしろ大人に訴えるメッセージ性も、大きな特徴だ。 例えば、レミーが勇気を持てずに怖じ気づいた時、悪事をはたらこうとする時に現れ、助言してくれる名シェフ・グストーの幽霊は、興味深い存在だ。 どうせファンタジー作品なのだ、グストーが不思議な力で助けてくれてもよさそうなものだが、「僕は君の想像の産物だから、何も出来ない」と意味深なセリフを残し、 消えてしまう。 無理を承知でシェフを目指すネズミは、「夢が自分の身の丈よりも大きく見えて、最初から挑戦をあきらめていた」人間のメタファーだ。 さらに彼の心のよりどころは幻のような存在で、実際には何もしてくれない。結局、良くも悪くも行動を起こすのは自分自身の意思ひとつで、 人生を築くのに他人の力は頼れない…というシビアな主張を、それとなくつきつけている。 とはいえ、主人公はおいしいものと料理が大好きなネズミ。 おいしい食事に巡り合い、身も心も満たされる。あの独特の幸福感を思いださせる、愛らしい作品だ。 文:谷藤さおり
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