「レミーのおいしい
レストラン」

2007年 アメリカ  117分
■監督:ブラッド・バード  
■製作総指揮:ジョン・ラセター

■声の出演:パットン・オズワルト
ルー・ロマーノ イアン・ホルム
ジャニーン・ガロファロー ブラッド・ギャレット
ピーター・オトゥール
■配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
この情報は2007年7月時点のものです。

 

踏み出せない夢のステージがある!
すぐれた鼻と舌を持つネズミのレミーは、一流シェフになるのが夢。ひょんなことからパリにたどり着いた彼は、今は亡き名シェフ・グストーの幽霊に出会い、彼のものだったレストランへ導かれる。そこで料理の才能ゼロの見習いシェフ・リングイニが、店の大事なスープを台なしにしてしまうのを見たレミーは、思わず味を整える。レミーの才能を知ったリングイニは、ネズミと2人でフランス一番のシェフを目指すという、とんでもないアイデアを思いつき・・・!?
あふれる幸福度
料理の魅力度
総評
料理が大好きで、幸せそうに“おいしいもの”をほおばるレミーがキュート! アニメとはいえ料理人には格別に深く響くセリフも多く、侮れない。

 

ネズミのレミーの夢は、一流シェフ!?
パリの厨房が舞台のファンタジック・アニメ


厨房の喧騒がそのままアニメに!

 一つひとつでも、おいしい食材。でもそれを同時にほおばると…元の味からは予想もつかない、味覚のシンフォニーが生まれる。そんな“味の無限の組み合わせ ”研究に余念がないレミーの夢は、フランスで一番の料理人になること。だがレミーは所詮 “キッチンの嫌われ者”、ネズミだ。 そんな夢は見るだけムダとあきらめていたが、ひょんなことから人間の協力者(というよりあやつり人形?)を得たレミーは、一気に夢に近付くが…!?
 史上初の長編フル3DCGアニメ『トイ・ストーリー』をはじめ、『ファインディング・ニモ』『カーズ』などの作品を世に送り出してきたディズニー /ピクサーの最新作は、なんとレストランが舞台だ。
 本物以上においしそうな料理は、料理写真の光や色を徹底的に研究し描かれた。またシェフたちのこなれた動きを描くために、 01年タイムマガジン誌でアメリカズ・ベスト・シェフに選ばれたカリスマシェフ、トーマス・ケラーを招き、調理風景を撮影したという。 さらにスタッフ向けに料理教室を行い、調理道具の使い方、料理の盛り付け方などを学んだという徹底ぶり。
 とことんディテールにこだわる本物嗜好のピクサーならではの、魅力あふれる映像に思わずワクワクさせられる。 特に逃げ回るレミー、つまりネズミ目線で描かれるディナー・ラッシュの厨房シーンは、スリリングで活気にあふれていて素晴らしい。

隠し味は大人の観客へのメッセージ

 ピクサーの魅力は、職人芸的な映像の美しさだけではない。子供よりむしろ大人に訴えるメッセージ性も、大きな特徴だ。
 例えば、レミーが勇気を持てずに怖じ気づいた時、悪事をはたらこうとする時に現れ、助言してくれる名シェフ・グストーの幽霊は、興味深い存在だ。 どうせファンタジー作品なのだ、グストーが不思議な力で助けてくれてもよさそうなものだが、「僕は君の想像の産物だから、何も出来ない」と意味深なセリフを残し、 消えてしまう。
 無理を承知でシェフを目指すネズミは、「夢が自分の身の丈よりも大きく見えて、最初から挑戦をあきらめていた」人間のメタファーだ。 さらに彼の心のよりどころは幻のような存在で、実際には何もしてくれない。結局、良くも悪くも行動を起こすのは自分自身の意思ひとつで、 人生を築くのに他人の力は頼れない…というシビアな主張を、それとなくつきつけている。
 とはいえ、主人公はおいしいものと料理が大好きなネズミ。 おいしい食事に巡り合い、身も心も満たされる。あの独特の幸福感を思いださせる、愛らしい作品だ。

文:谷藤さおり

 

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