「王様の漢方 特別版」

2002年 日本=中国  104分
■監督・原作・共同脚本・美術:ニュウ・ポ
■共同脚本:江戸木純
■出演:チュウ・シュイ 渡辺篤史 
ノーマン・リーダス 沢本忠雄 中山一朗 
■DVD「王様の漢方 特別版」
発売元:東芝デジタルフロンティア 
販売元:角川エンタテインメント(総販売元:アスミック)
¥4,935(税込)
この情報は2006年7月時点のものです。

 

 

 

バーチャルでもいいから癒されたい!
市川一雄が北京で経営している小さな貿易会社は、倒産の危機に直面していた。そんな中、漢方医のリ・レンと偶然出会い、長年悩んできた持病を治療してもらった市川は、さまざまな健康上の悩みを抱えた日本人相手の“漢方ツアー”を思いつく。一行は万里の長城のふもとに住むリ・レンのもとで治療を受けるうち、心身ともに癒されていく。雄大な自然と世界遺産に抱かれ、中国医学の奥深さに触れた経験は、やがて彼らの人生観まで大きく変えていき・・・。
心穏やか〜度
料理の魅力度
総評
ストーリーこそ荒唐無稽だが、不思議な魅力のある作品。公開時のキャッチコピー「見る薬膳。」は、あながちウソじゃなかった! 心に効きます。

世界遺産のもと、次々と明かされる漢方の秘密
見ているだけで心が解放される日中合作映画


恐るべし! 中国5千年の英知

  秦の始皇帝が不老不死を求めて研究を重ね、西太后が美容のために完成させたと言われる漢方。
末期ガンの会社経営者、インポテンツのヤクザ、ダイエットしたいモデル、性同一性障害の青年など、さまざまな心と体の悩みを持つ日本人が、万里の長城のふもとで治療を受けていく。
  その治療というのが、実に多彩! 薬膳料理や漢方薬にはじまり、経路マッサージ、鍼灸、呼吸法に太極拳など。まるで仙人のような名漢方医リ・レンを通じて、中国の“健康”と“美容”に関する知恵と秘法が、惜しげもなく開陳されていく。悠久の時の中で磨かれてきた中国医学の深遠さには感嘆させられっぱなしだ。また健康の定義、病気治療に対する考え方など、その哲学もまさに目からウロコ。大いに教えられる。
  この作品では、ストーリーはさして重要ではない。大胆な展開や筋の省略に戸惑うかもしれないが、映像の美しさ、リ・レンのウンチクの面白さで、そうしたほころびもさほど気にならない。全編をゆったりと流れる時間に身をまかせ、リラックスできる意味では非常に貴重な作品といえよう。

驚愕の晩餐の裏に、秘法あり!

  さて“漢方ツアー”メンバーは、初日の晩餐でドギモを抜かれる。季節の果物のシロップ漬け、キジの香草焼き、ひょうたんの皮のサラダ。このあたりはまだいい。続いて運ばれたのは、見るからにグロテスクなウサギの丸焼きに牛ガエルの蒸し物。サソリのフライ、冬虫夏草とスッポンの姿煮も尻込みしてしまいそうだ。そして極めつけは、極彩色の皮を残したまま塩茹でした白花蛇に、カタツムリの踊り食い!
  人の良さそうな老人リ・レンに料理を勧められたメンバーは、無下に断ることもできず困ってしまう。しかしこれは、どの料理に手をつけ、おいしいと感じたのかなど、その人の反応からどんな病を患っているのか診断する看菜(カンツァイ)診療なのだった。とはいえここまで強烈なメニューは、現在は中国でも出されないそうだ。
  最初の洗礼こそ強烈だったものの、ストレスフルな俗世から離れたメンバーは、雄大な風景と大らかな人々との触れあいの中で心身ともに癒されていく。そりゃこんなところでのんびりできれば、どんな病気も治っちゃうよなぁ…と、思わず彼らがうらやましくなってしまった。
  始皇帝が放った調査団は、新たな薬を求め日本にもやってきた。日中国交正常化30周年を記念し製作された本作では、日本人が中国を訪れ漢方に助けられる。政治色を排除し、文化の相互理解を深めあう素朴な交流を描いた選択は、正解だったと思う。


文:谷藤さおり

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