世界遺産のもと、次々と明かされる漢方の秘密 見ているだけで心が解放される日中合作映画 恐るべし! 中国5千年の英知 秦の始皇帝が不老不死を求めて研究を重ね、西太后が美容のために完成させたと言われる漢方。 末期ガンの会社経営者、インポテンツのヤクザ、ダイエットしたいモデル、性同一性障害の青年など、さまざまな心と体の悩みを持つ日本人が、万里の長城のふもとで治療を受けていく。 その治療というのが、実に多彩! 薬膳料理や漢方薬にはじまり、経路マッサージ、鍼灸、呼吸法に太極拳など。まるで仙人のような名漢方医リ・レンを通じて、中国の“健康”と“美容”に関する知恵と秘法が、惜しげもなく開陳されていく。悠久の時の中で磨かれてきた中国医学の深遠さには感嘆させられっぱなしだ。また健康の定義、病気治療に対する考え方など、その哲学もまさに目からウロコ。大いに教えられる。 この作品では、ストーリーはさして重要ではない。大胆な展開や筋の省略に戸惑うかもしれないが、映像の美しさ、リ・レンのウンチクの面白さで、そうしたほころびもさほど気にならない。全編をゆったりと流れる時間に身をまかせ、リラックスできる意味では非常に貴重な作品といえよう。 驚愕の晩餐の裏に、秘法あり! さて“漢方ツアー”メンバーは、初日の晩餐でドギモを抜かれる。季節の果物のシロップ漬け、キジの香草焼き、ひょうたんの皮のサラダ。このあたりはまだいい。続いて運ばれたのは、見るからにグロテスクなウサギの丸焼きに牛ガエルの蒸し物。サソリのフライ、冬虫夏草とスッポンの姿煮も尻込みしてしまいそうだ。そして極めつけは、極彩色の皮を残したまま塩茹でした白花蛇に、カタツムリの踊り食い! 人の良さそうな老人リ・レンに料理を勧められたメンバーは、無下に断ることもできず困ってしまう。しかしこれは、どの料理に手をつけ、おいしいと感じたのかなど、その人の反応からどんな病を患っているのか診断する看菜(カンツァイ)診療なのだった。とはいえここまで強烈なメニューは、現在は中国でも出されないそうだ。 最初の洗礼こそ強烈だったものの、ストレスフルな俗世から離れたメンバーは、雄大な風景と大らかな人々との触れあいの中で心身ともに癒されていく。そりゃこんなところでのんびりできれば、どんな病気も治っちゃうよなぁ…と、思わず彼らがうらやましくなってしまった。 始皇帝が放った調査団は、新たな薬を求め日本にもやってきた。日中国交正常化30周年を記念し製作された本作では、日本人が中国を訪れ漢方に助けられる。政治色を排除し、文化の相互理解を深めあう素朴な交流を描いた選択は、正解だったと思う。
文:谷藤さおり
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