せまいキッチンに閉じこめられた、2人の男。 クスリと笑えて、心温まる珠玉の1本! 奇妙すぎる“台所の使い方”調査 使いやすいキッチンや台所用品を開発するため、主婦のキッチン内での動きを研究し尽したスウェーデンのHFI(家庭調査協会)。彼らが次に狙いを定めたのは、独身男性のそれだった。キッチンでの人の動きを調べるなら、部屋の隅にビデオカメラを仕掛けておけば済む話だ。しかし時代は50年代。ご苦労なことに、人間が24時間張り付いて観察するしかない。 かくしてノルウェーの田舎町に、小さなトレーラーを引きずった小型車が大挙してやってくる。彼らはトレーラーを独身男性の家に横づけすると、キッチンにテニスの審判のような台を持ち込み、息を潜めて対象者の一挙手一投足を記録する。それだけでもなかなか異常な光景なのだが、この調査には重要なルールがあった。ちょうど野生動物の生態観察と同じく、対象者への介入は一切厳禁。もちろん会話も、だ。 ところが。調査開始早々、困った事態が起こり始める。対象者と調査員がルールを侵して、仲良くなってしまうケースが続出するのだ。それは普段からほとんど他人と接触しないイザックと、職務に真面目な調査員フォルケの場合も例外ではなかった。 話してみないと、わからないこと 最初はフォルケがキッチンに残っていても、構わず電気を消してしまうほどイジワルだったイザック。だが親しくなってみると、これが結構イイ奴だったりする。そしてフォルケも、イザックと会話を交わすようになって始めて、彼の不思議な行動の意味を知ることになる。どうして電話に出ないのか。イザックの唯一の友人グラントは、なぜイザックに切ってもらった自分の髪を持ち帰るのか。そして、台所ではなく寝室で煮炊きするのはなぜか・・・。 隣国とはいえ、国民性も食文化も違う彼らの間には、微妙な温度差がある。しかしそうした国民感情を乗り越えて、寡黙で無表情だった2人の男はゆっくりと友情を育み、理解しあい、やがて笑顔を見せ始める。だが生きるために最低限の食事しか取っていなかったイザックが、クリスマスのごちそうを心待ちにするようになった頃、2人の関係はHFIの知るところに・・・。 2人が親しくなるまでのぎこちないやりとり、風邪をひいたフォルケにイザックが施す奇妙な民間療法など、静かな描写の中にオフビートな笑いと驚きが満載だ。しかし甘くなりすぎず、人間の嫉妬心や孤独、悲哀までをしっかり描いているのが、いかにも物事の本質を見逃さない北欧らしく、信頼できる。観客に解釈の余地を残したラストも最高! 底冷えする夜に、心まで温めてもらえるオススメの一本です 文:谷藤さおり
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