「ショコラ」

2000年 アメリカ  121分
■監督:ラッセ・ハルストレム 
■原作:ジョアン・ハリス
■脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス
■出演:ジュリエット・ビノシュ ジョニー・デップ
アルフレッド・モリーナ ジュディ・デンチ
キャリー=アン・モス
■DVD「ショコラ DST特別版」
¥3,990(税込)販売:アスミック(税込))
この情報は2007年2月時点のものです。

 

地域の人々を店のトリコにしたい
古いしきたりに縛られたフランスの小さな村に、謎めいた母娘がやってくる。間もなく2人は、町の広場に面した場所でチョコレート・ショップを開く。初めは新参者を警戒していた住民も、女主人のヴィアンヌが作った美味しいチョコに魅了されていく。やがてチョコの甘美さは人々の心を解放し、情熱を取り戻させ、町の雰囲気まで明るくする。だが厳格な規律を重んじる村長のレノ伯爵は、次々と村のしきたりを打ち破るヴィアンヌを目の敵にし・・・。
住めば都!度
料理の魅力度
総評
豪華キャストが集結したヒット作。小さなドラマが、丁寧にいくつも重ねられていく。色とりどりのチョコ、店のディスプレイも見どころ。

 

チョコレートを食べれば、誰もが幸せ!?
閉鎖的な村にやってきた母娘の奮闘記


母娘が運んできた、チョコの魔力

 妊娠中に毎日1カケラのチョコを食べると、陽気な子供が生まれるという。真偽のほどは定かではないが、一口食べれば幸せになるチョコレート。母親の精神状態が胎児に与える影響を考えれば、ありえない話でもなさそうだ。
 最近ではポリフェノールやギャバなど、チョコが心身に及ぼす好影響が科学的に解明されている。だが2千年以上も前、古代マヤ人はすでにその効用を知っていた。
 そんな一族の末裔にあたるヴィアンヌが、幼い娘を連れてフランスの小さな村に流れてくる。だがよそ者の母娘は閉鎖的な田舎町で警戒され、なかなか住民に受け入れてもらえない。その上、快楽を禁ずる敬虔なクリスチャンの村で、2人はあろうことか断食期にチョコ専門店を開店させる。村の伝統と規律を何としても住民に守らせたい村長レノは、甘い誘惑を持ち込んだヴィアンヌを“悪魔”と呼んではばからない。
 しかしヴィアンヌには、客にぴったりのチョコを見極める不思議な能力があった。彼女が見立てたチョコの力で、小さな変身を遂げていく住民たち。やがて母娘も、少しずつ村に馴染んでいくのだが…。

甘さの中に苦味が潜むファンタジー

 おとぎ話のようにファンタジックな本作だが、根底には“哲学”が流れる。ヴィアンヌはよそ者である以上に、異教者だから住民に反発されるのだ。これまで何度も戦火を招いてきた宗教と文化の対立が、ミニマムな形で描かれていく。自分たちの規律を死守するのか、他者の異文化を容認するのか。本当の悪人は1人もいないこの村で、人々は“収まりどころ”を探り続ける。
 もう一つ描かれるテーマは、人間の精神的な自由だ。チリペッパー入り、バラのクリーム入り、グアテマラのカカオのチョコ。町から町へと移り住み、様々なチョコを客に“処方”してきた彼女は、人々の目に自由の象徴として映る。だが実際の彼女は過去の亡霊に取り憑かれており、精神的な自由はおろか、心の平安すら持ちあわせていない。旅の中で暮らす者が、自由だとは限らない。ファンタジックな甘さの中に、ほろ苦い真理がブレンドされている。
 さて、冒頭の一説だ。私の友人が、身を持ってその真偽を確かめた。1歳と数ヶ月になる彼女の娘は、まったく人見知りせず、よく笑い、よく遊ぶ。遊びたい一心で夜もなかなか寝てくれない娘を見て、彼女は「毎日、チョコを食べすぎたかも」と笑う。
 劇中、チョコレートのディナーを囲んだ人々が、意外な美味しさに大声で笑い出す。そのシーンを見て、やっぱりあの娘の陽気さは、チョコの影響かしら…と考えた。


文:谷藤さおり

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