羊の皮をかぶったインテリたちが大暴走! 異論者を毒殺していくブラック・コメディ おかしな人種は、殺して正解!? 「ひときわ美しい花を咲かせる桜の下には、死体が埋まっている」という。だがこの映画の場合、丸々と太った実を付けるトマトの下に、死体がある。 良識ある人間のフリをしながら、他人を小馬鹿にした若きインテリたちは、ヒトラーを礼賛してはばからない男にプライドを傷つけられる。「しょせんは口先ばかりのインテリめ、お前たちには何もできない」。 男の語る論理はあまりに非常識だけど、その批判だけは見事に的を得ていた。大ゲンカの末、男を刺殺してしまった5人は、半狂乱となり仲間割れを起こす。 そんな中、やけに冷めた顔で果物を食べ続ける女が1人。男に骨を折られ、痛みで転げ回っている仲間に「とりあえずお酒でも飲んだら?」と言い放つ。いまや超人気女優のキャメロン・ディアス(!)だ。 結局、トマトを栽培している小さな庭に男を埋めた5人は、やがて「あんな危険人物、殺して正解だった」と思い始める。そして極端にかたよった説を振りかざす輩を次々と見つけてきては、デザートの前に毒殺するためディナーに招くのだ。食事の間、5人は彼らの暴言に耳を傾けるが、その内容の面白いこと! コメディとはいえ、その主張には妙な現実味があり「こんな人間、本当にいそうだなあ…」と思わせるあたりに、本作の面白みがある。 邪悪な顔したトマトたち さて。貧弱な土のせいで不作だったトマトは、犠牲者たちの死体を養分にして急激に太りだす。採っても採っても、食べきれないほど収穫される特大トマト。料理担当の女性は、ソースを作ってビンに詰めたり、ドライトマトにしたりと工夫を凝らす。 それにしても、燦々と降り注ぐ陽をたっぷり浴びた真っ赤なトマトのイメージは、本来、陽気で健康的なもの。だが本作の完熟トマトには、何とも不気味な迫力が漂う。山積みのトマトは、殺された者たちに代わって今にも怨念を語り始めそうだし、ソースの鮮やかな赤は彼らの血を、ドライトマトの暗赤色はひからびた死肉を、容易に連想させるのだ。幸福で平和な食材を、撮り方ひとつでこんなにもまがまがしく見せられるのか、と思わず感心してしまった。 そんな恐ろしいトマトも加わった食卓で、5人の暴走は加速する。彼らはワインを傾けながら、今夜の客は殺すにふさわしいかとワクワクしながら値踏みするのだ。 しかしディナーの席というものは、実際もかなりスリリングなステージではないだろうか。ご馳走を口に運び、聞き流している振りをして、同席者は鋭い目であなたを観察している…かもしれない。ご用心! 文:谷藤さおり
ごちそうエンタインデックスへ>>
グルメキャリー本誌は、毎月第1・3木曜日各コンビニエンスストア・書店にて好評発売中!次号は9月4日発売!
いつでもどこでも、グルメキャリーの新着情報をチェック!
http://gourmetcaree-tokyo.com/