「マリー・アントワネット」

2005年 アメリカ・フランス・日本  123分
■監督・脚本・プロデューサー:ソフィア・コッポラ
■原作者:アントニア・フレイザー
■製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
フレッド・ルース
■出演:キルスティン・ダンスト
ジェイソン・シュワルツマン
アーシア・アルジェント マリアンヌ・フェイスフル
■配給:東北新社/東宝東和
この情報は2007年1月時点のものです。
伝統と流行を、劇的に融合させたい
オーストリア皇女アントワーヌ(のちの王妃マリー・アントワネット)は、わずか14歳でフランス王太子と政略結婚させられる。初めて足を踏み入れたフランスで彼女を待っていたのは、風変わりなしきたりと陰口に満ちた、ヴェルサイユでの暮らしだった。しかも夫のルイは彼女に興味を示さず、指一本触れようとしない。子作りのプレッシャーと寂しさからマリーは夜遊びを覚え、贅沢な生活に溺れていく。そんな中、夫がルイ16世に即位、マリーも王妃となる。
究極のセレブ度
料理の魅力度
総評
気品漂うキルスティン・ダンスト(『スパイダーマン』のヒロイン!)が美しい。映像もハイセンスな、まったくニュータイプの歴史映画。

 

これぞ革命! 斬新な味付けの歴史絵巻
究極のセレブ生活をポップに描いた話題作


ケーキから生まれた歴史絵巻

  「パンがないなら、ケーキを食べれば?」。重税を課せられた平民が、日々の食糧にも事欠いていると聞かされた王妃マリーは、あっけらかんとそう答えた。あまりに有名な逸話だが、実際の彼女はそんな発言をしていないそうだ(映画でも否定されている)。しかし誤った“定説”が時を超え、まことしやかに語り継がれてきたのも、彼女の贅沢ぶりがあまりに有名だからだろう。
  そんなマリーの半生を大胆に、みずみずしく描いた本作。まず新鮮なのは、その色彩だ。これまでの歴史モノにありがちな暗く沈んだ色はなりを潜め、かわりに明るく軽やかなシャーベット・カラーが画面を支配する。実はこれ、焼き菓子のマカロンに感化されたものだとか。また衣装も、サントラの1曲「アイ・ウォント・キャンディ」(バウ・ワウ・ワウ)の題名のように、見るものに「食べたい」と思わせる素材や色のものを選んだという。カラフルな靴にいたっては、まるで砂糖菓子だ。
  そしてマリーを取り囲む、夢のように美しいケーキたち! パリで1862年に創業した老舗・ラデュレがパティスリー・コンサルタントを務めたスイーツの数々が、まるで宝石のように光り輝く。デコラティブで贅沢な食卓、それらの美しさを際立たせる食器や花など、食にまつわる風景にも並々ならぬ力が注がれた、豪華な作品だ。

ゴーゴー“ア・ラ・モード”!

  純真な少女だったマリーが孤独に泣き、享楽を知り、やがて大人になっていく本作のストーリーは、史実にかなり忠実だ。あちこちに散りばめられたマリーのエピソード、そしてフランス政府の全面的な協力のもと、本物のヴェルサイユ宮殿や史跡で撮影された多くのシーンは、少しでもこのあたりの歴史を知っておくと感動モノだ。
  そして何と言っても斬新なのは、その味付け。前述の色、食文化、ファッションに加えサントラの選曲も強烈だ。例えば、オペラ座の仮面舞踏会シーン。コスプレの彼らがくるくると舞う曲は、なんとロック! しかし当時の仮面舞踏会といえば、貴族と平民が入り交じって騒げる貴重なイベントで、いわば無礼講。今でいうならクラブのような、ポップでハジけた場だったのだ。
  この味付けは、当時のマリーがまだティーンエイジャーだったことを思い出させる。そんな彼女が国政よりもセレブ生活に熱中したのは、無理もないことだったのかもしれない。そして、その刺激的で“ア・ラ・モード”(=当世風)な演出は、外国からやって来た王妃が、当時の宮廷にどれほど鮮烈なセンセーションを巻き起こしたのか、感覚的に伝えてくれるのだ。

文:谷藤さおり

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