適齢期の3人娘と職人気質の料理人が織りなす 予測不能、悲喜こもごものホーム・ドラマ! 適齢期の娘を抱えた一家の行く末は? 「食と性は、人間の欲望だ。いくつになっても振り回される」。本作は、文字通りふたつの本能に突き動かされ、変化していく一家の物語だ。といっても、センセーショナルな映像表現は極めてひかえめ。彼らの衝動は、信じられないほどドラマティックで急激なストーリーとして現れていく。 チュ家の3人娘は、性格もタイプもバラバラだ。敬虔なクリスチャンで、恋愛にもオクテなカタブツ高校教師の長女。才色兼備の次女は航空会社のキャリアウーマンで、元彼と身体だけの関係を続ける進歩的な女性だ。三女はファーストフード店でバイトをする無邪気な女学生だが、オンナとしてはまだまだヒヨッコであどけない。 母の死後、チュ家では父が家事を取り仕切ってきた。しかしその父も高齢。味覚の衰えた今、料理人を引退する日も遠くなさそうだ。一体、誰が家に残って面倒を見るのか…。3人の娘の顔は思わず曇り、家族揃っての夕食も憂鬱なものになっていた。 しかし一家の運命は急速に転がりだし、娘たちは1人、また1人と家を飛びだしていく。そして最後に待ち受けるのは、想像をはるかに超える痛快な大どんでん返し! 語り口こそ穏やかだが、新鮮な驚きと人生の喜びに満ちた、刺激的な作品だ。 料理人の執念漂う、豪華すぎる食卓 見事な中華料理がさりげなく、次々と登場する本作。オープニングから、いくつもの料理をリズミカルに、よどみなく調理するチュの職人技が堪能できる。庭先で鶏を育て、たくさんのビン詰め香辛料や包丁に囲まれた、チュ家の台所。家の食卓でも妥協を許さない、徹底した職人なのだ。 チュがコック長を務めるホテルが、これまたスゴイ。トラブルで呼びだされたチュは、裏口から厨房に颯爽と駆け込む。しかし彼がいくつ扉を開けても、延々と続く巨大な厨房。殺気立った厨房の大きさで店の巨大さを一瞬にして伝える、名場面だ。 しかしそんなチュの料理は、娘たちにはすこぶる評判が悪い。食べ飽きているのかと思ったら、どうやらそうではないらしい。そもそもチュが用意する夕食は、量も質も常軌を逸している。小さな円卓に並ぶのは、皿に料理で絵を描いたような宮廷料理の数々。それは娘への愛情ではなく、むしろ職場では求められない本物の職人芸を発揮する、ストレス発散の場に過ぎないのだ。そんなチュの料理に対する妄執が、ヤケクソのように豪華な夕食からにじみだす。 おまけに味がわからなくなるわ、娘は次々と嫁いでしまうわ、踏んだり蹴ったりの老料理人だが、最後に観客の同情を呆れるほど見事にはねのける。ご期待あれ!
文:谷藤さおり
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